リサイクルショップや古着店で着物を見つけたとき、「きれいな柄だけれど名前が分からない」「なんとなくおめでたい模様に見える」ということがあります。着物には植物、動物、自然現象、道具、幾何学模様などを図案化した数多くの文様があり、その中には長寿や繁栄、良縁などへの願いを込めた吉祥文様(きっしょうもんよう)も数多く存在します。
ただし、着物の柄は一つのモチーフだけで構成されるとは限りません。松・竹・梅を組み合わせた「松竹梅」のようなものもあれば、宝物を複数組み合わせた「宝尽くし」、さまざまな吉祥文様を一つの意匠にまとめたものもあります。そのため、正確な柄名を特定するには着物全体だけでなく、描かれている一つひとつのモチーフを見ることが大切です。
ここでは、着物でよく見られるおめでたい柄の名前と意味を整理するとともに、写真から柄を調べる際のポイントや、柄が分からないリサイクル着物を確認する方法を紹介します。
着物の「おめでたい柄」は吉祥文様と呼ばれることが多い
縁起が良いとされる意味を持つ伝統的な文様は、一般に「吉祥文様」と呼ばれます。「吉祥」には、めでたいことや良い兆しという意味があり、着物や帯をはじめ日本の工芸品に古くから取り入れられてきました。
吉祥文様は一種類ではありません。例えば松は常緑であることから長寿や生命力、竹はまっすぐ成長する姿などから成長や生命力、梅は寒い時期を経て早春に花を咲かせることから忍耐や生命力を連想させる文様として親しまれています。これらを組み合わせたものが有名な「松竹梅」です。
また、鶴と亀、鳳凰、宝尽くし、七宝、青海波なども吉祥性のある代表的な意匠です。したがって「めでたい感じがする」という印象は、柄を特定するうえで有力な手掛かりになります。
まず確認したい代表的な吉祥文様
リサイクル着物で柄の名前を調べる場合、最初から特殊な文様を探すより、着物や帯で頻繁に使われる代表的なモチーフと照合すると見つけやすくなります。
| 文様 | 見分けるポイント | 一般的に込められる意味 |
|---|---|---|
| 松竹梅 | 松・竹・梅を組み合わせる | 長寿、生命力、繁栄など |
| 鶴 | 長い首と脚を持つ鳥 | 長寿、夫婦円満など |
| 亀・蓑亀 | 亀、または尾のように藻を引く亀 | 長寿 |
| 鳳凰 | 華麗な尾羽を持つ想像上の鳥 | 平和、繁栄など |
| 宝尽くし | 複数の宝物を散らした図柄 | 富、福、幸運 |
| 七宝 | 円を規則的に重ねた幾何学模様 | 円満、縁のつながり |
| 青海波 | 半円状の波を規則的に重ねる | 平穏な暮らしが続く願いなど |
| 麻の葉 | 六角形を基本とする幾何学模様 | 健やかな成長 |
| 扇 | 開いた扇子 | 末広がり、発展 |
| 熨斗 | 細長い帯状のものを束ねた形 | 慶事、長寿など |
意味については時代、地域、組み合わせ、解説資料などによって表現が多少異なります。「この柄には必ずこの意味しかない」と考えるより、伝統的にどのような願いと結び付けられてきたかを見ると理解しやすくなります。
「宝物のような物」がたくさん描かれていたら宝尽くしを確認
一見しただけでは何を描いているのか分かりにくいものの、「なんとなく縁起物がたくさん並んでいる」という柄なら宝尽くし(たからづくし)の可能性があります。
宝尽くしは、さまざまな宝物を組み合わせた吉祥文様です。代表的なモチーフには打出の小槌、宝珠、隠れ蓑、隠れ笠、金嚢、丁子、宝鍵、巻物などがあります。ただし、実際の意匠ではすべてが描かれるとは限らず、いくつかの宝物だけを取り入れる場合もあります。
例えば、小さな巾着のような物、巻物のような物、小槌のような物などが花や雲と一緒に散りばめられている場合、単なる道具柄ではなく宝尽くしとしてデザインされている可能性があります。
束ねたリボンのような柄なら熨斗文様の可能性
細長い帯やリボンのようなものが何本も重なり、大きく流れるように描かれている場合は「熨斗文(のしもん)」や「束ね熨斗」を確認してみましょう。
現代では贈答品の「のし紙」を思い浮かべますが、着物では熨斗を図案化した華やかな文様があります。特に複数の熨斗を束ねた束ね熨斗は、振袖など祝いの場で着用する華やかな着物にも使われます。
熨斗の帯状部分そのものに花や亀甲、青海波など別の文様が描かれることもあります。そのため遠目では「いろいろな柄が入った長いリボン」のように見える場合があります。
丸が連続して花のように見えるなら七宝文様
同じ大きさの円が規則正しく重なり合い、花びらのような形が連続している場合は「七宝文様」の可能性があります。
七宝文様は円が途切れず連続して広がっていくことから、人との縁や円満などを象徴する吉祥文様として扱われています。「七宝つなぎ」と呼ばれることもあります。
非常に図案化された柄なので、初めて見ると植物なのか幾何学模様なのか判断しにくいことがあります。円弧が同じ間隔で規則的に連続しているかを見るのが見分けるポイントです。
扇が描かれているなら「末広がり」の吉祥性がある
扇子を開いた形も着物ではよく見られます。扇は手元から先端へ向かって広がっていく形から「末広がり」に通じ、将来の発展を願う吉祥性のあるモチーフとして用いられてきました。
着物では扇だけが描かれる場合もあれば、扇面の中に梅、菊、桜、御所車など別の図柄を描く場合もあります。その場合は「扇面文」などと説明されることがあります。
複数の扇が散らされているデザインなら、まず扇文・扇面文をキーワードに類似する着物を探してみるとよいでしょう。
亀甲・青海波・麻の葉などの幾何学文様にも意味がある
着物の縁起柄というと動植物を想像しやすいものですが、規則正しく繰り返される幾何学文様にも伝統的な意味があります。
例えば六角形が連続する「亀甲」は亀の甲羅を連想させ、長寿を象徴する吉祥文様として使われます。半円形の波が連続する「青海波」は、穏やかな波がどこまでも続く姿から平穏な暮らしが続くことへの願いなどと結び付けられています。
麻の葉を図案化した「麻の葉」は、麻が成長する姿になぞらえて子どもの健やかな成長を願う文様としても知られています。花が描かれていなくても、十分に「おめでたい柄」である可能性があります。
花の種類を見分けると柄の候補をかなり絞れる
花柄の場合は、まず何の植物かを確認します。着物では桜、梅、菊、牡丹、藤、桔梗、萩、橘など、さまざまな植物が図案化されています。
例えば梅は丸みを帯びた5枚の花弁として描かれることが多く、牡丹は大きく重なった花びらを持つ豪華な姿、菊は中心から細かな花びらが多数広がる姿で表現されることがあります。ただし意匠化の程度によって実物の植物とはかなり違って見えることもあります。
複数の季節の草花が一緒に描かれている場合は「四季花」「四季草花」などと呼ばれることもあります。したがって「桜があるから桜柄」と一つだけで判断せず、周囲の植物も確認することが大切です。
同じ着物に複数の文様が入っていることは珍しくない
着物の柄を調べる際に迷いやすい理由の一つが、複数の文様を組み合わせたデザインです。例えば扇の中に松竹梅が描かれ、その周囲に七宝や亀甲が配置されているような着物もあります。
この場合、「正式名称は一つだけ」とは限りません。「扇面に松竹梅を配した吉祥文様」のように、主要な構図と中に描かれたモチーフを組み合わせて説明した方が正確な場合があります。
販売店の商品名でも「松竹梅文」「吉祥花文」「扇面吉祥文」など表現が異なることがあります。商品名として付けられた名称と、美術・染織分野における文様の分類が完全に一致するとは限らない点にも注意しましょう。
柄の名前だけで着物の格は決まらない
「おめでたい柄だから結婚式に着られる」「古典柄だからフォーマル」という判断はできません。着物の着用場面を判断するには、柄だけではなく着物の種類、染め方、紋の有無、素材、柄の配置、帯との組み合わせなども確認する必要があります。
例えば同じ松竹梅が描かれていても、訪問着、付け下げ、小紋などでは一般的な着用場面が異なります。紬など素材によっても位置付けが変わります。
リサイクル着物の場合、販売時の商品分類が必ずしも正確とは限りません。礼装として使いたい場合には、着物専門店や着付けに詳しい専門家へ現物を見てもらうと確実です。
リサイクル着物の柄を特定するときに撮影したい部分
専門店や詳しい人に柄を尋ねる場合、着物全体の写真だけでは判断できないことがあります。文様部分をアップで撮影すると特定しやすくなります。
おすすめは「着物全体」「上前の柄」「袖の柄」「背中側」「柄をアップにした写真」の複数枚です。証紙や落款が残っている場合には、それらも一緒に撮影します。
特に図案化された植物は、小さな写真では梅なのか桜なのか、橘なのか別の植物なのか判断できない場合があります。刺繍、金彩、絞りなど技法を確認したい場合も接写写真が役立ちます。
画像がない場合は柄を断定しないことが重要
「リサイクルショップで購入した、おめでたい感じの柄」という情報だけでは、特定の文様名まで断定することはできません。吉祥文様には非常に多くの種類があり、似た図案も存在するためです。
例えば「丸い物が連続している」という説明でも、七宝、亀甲、花菱など複数の候補が考えられます。「鳥が描かれている」という情報だけでも鶴、鳳凰、孔雀などを区別できません。
写真が確認できない状態で具体的な柄名を決めつけず、特徴を一つずつ照合することが正確な特定につながります。画像から調べる場合も、最初に大きなモチーフを特定し、その後に周囲の細かな文様を見る順序がおすすめです。
まとめ:着物の柄はモチーフを一つずつ確認すると分かりやすい
着物を見て「何かおめでたい感じがする」と感じた場合は、松竹梅、鶴亀、宝尽くし、熨斗、扇、七宝、亀甲、青海波などの吉祥文様が使われていないか確認してみましょう。
ただし、一枚の着物に複数の文様が組み合わされることは珍しくありません。そのため「この着物は○○柄」と一語で表せず、例えば「扇面の中に四季の草花と吉祥文様を配した柄」のように説明する方が適切な場合もあります。
リサイクルショップで購入した着物なら、柄の名称だけでなく、着物の種類、素材、紋、仕立て、柄付けなどを調べていくのも楽しみ方の一つです。礼装など特定の用途で着用する予定がある場合には、柄だけから判断せず、着物専門店などで現物を確認してもらうと安心です。


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