ファッションブランドについて調べていると、「アウトレットに出店しているブランドは格が低い」「エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルは世界三大ハイブランド」といった表現をSNSやWeb上で見かけることがあります。しかし、ブランドの価値や格付けは、アウトレットへの出店の有無だけで決まるものではありません。
また、エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルをまとめて「世界三大ハイブランド」と呼ぶ公的・業界統一の制度や公式ランキングが存在するわけでもありません。3ブランドはいずれも世界を代表するラグジュアリーブランドですが、「世界三大」という表現とアウトレット戦略は分けて考える必要があります。
ここでは、なぜこの3ブランドが特別な存在として語られやすいのか、アウトレットに出店しないことにはどんな意味があるのか、そしてアウトレットに入っているブランドを単純に格下と評価できない理由まで整理します。
「世界三大ハイブランド」は公式な称号ではない
まず押さえておきたいのは、「世界三大ハイブランド」という名称に世界共通の公式な定義があるわけではないことです。ファッション業界全体を統括する機関が、ブランドを審査して上位3社を認定しているわけではありません。
エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルは、歴史、知名度、商品価格、職人技、ファッションへの影響力などから最高峰のラグジュアリーブランドとして頻繁に扱われます。その結果、日本ではこの3ブランドを便宜的に「世界三大ブランド」「三大ハイブランド」などと表現することがあります。
しかし評価基準を変えれば、ディオール、グッチ、プラダ、カルティエなど、世界的に重要なラグジュアリーブランドはほかにも数多くあります。そのため「世界三大」は絶対的な格付けではなく、3ブランドの突出した知名度やブランド力を分かりやすく表現した通称に近いと考えるのが適切です。
エルメス・ルイ・ヴィトン・シャネルが特別視される理由
3ブランドには、単に商品価格が高いという以上の共通点があります。それぞれ長い歴史を持ち、ブランドを象徴する製品を生み出しながら、世界規模で高い認知度を築いてきました。
エルメスは1837年にパリで馬具工房として創業し、現在ではバッグ、革小物、シルク製品、時計、ジュエリーなど幅広い分野を展開しています。「バーキン」や「ケリー」はブランドを代表するバッグとして知られています。
ルイ・ヴィトンは1854年にパリで創業し、旅行用トランクをルーツとするブランドです。モノグラムやダミエなど、遠くからでもブランドを認識できるデザイン資産を持つことも大きな特徴です。
シャネルはガブリエル・シャネルによって築かれたメゾンで、ファッションだけでなくバッグ、ジュエリー、時計、香水などにも大きな存在感があります。「シャネル N°5」やキルティングバッグなど、ブランドを象徴する製品を複数持っています。
つまり3ブランドが最高峰として評価される背景には、歴史、デザイン、製品、希少性、価格政策、販売体験、世界的知名度などが長期間にわたって積み重なっているという事情があります。
アウトレットに出店しないからハイブランドなのか
ここで混同されやすいのが因果関係です。「アウトレットに出店しないから最高級ブランドになった」というより、ブランド価値を維持するための販売戦略の一つとして、値引き販売やアウトレットへの依存を避ける企業がある、と考えるほうが実態に近くなります。
ラグジュアリービジネスでは、商品そのものだけでなく「どこで、いくらで、どのように購入できるのか」もブランド価値を構成します。商品がいつでも大幅な割引価格で手に入るようになると、正規価格で購入する顧客が価格に疑問を持つ可能性があります。
例えば定価50万円の商品が頻繁に25万円で販売されていれば、消費者は「50万円で買わず、値下げされるまで待とう」と考えるようになるかもしれません。高級ブランドが流通量や値引きを厳しく管理する背景には、このような価格イメージを守る目的があります。
ルイ・ヴィトンは公式に「セールを行わない」と説明している
ルイ・ヴィトンは公式サイトのFAQで、セールを行わず、商品はルイ・ヴィトンの店舗、公式サイトなどを通じて販売すると説明しています。また、値下げ商品を卸売することもないとしています。
このような販売政策は、商品の価格と流通経路をブランド自身が管理する典型的な例です。アウトレットで売らないこと自体がブランド価値を生み出すというより、流通と価格をコントロールする一貫したブランド戦略の一部分と見ることができます。
なお、各ブランドの販売方針は将来変更される可能性があります。ブランドの現在の販売方法について判断する場合には、その時点の公式情報を確認することが重要です。
アウトレットに入っているブランド=格が低い、ではない
一方、「アウトレットにあるブランドは大したことがない」という評価にも注意が必要です。アウトレット出店は企業の流通戦略であり、ブランドの品質や歴史を直接表す指標ではありません。
アウトレットモールには、世界的に知られたデザイナーズブランドやプレミアムブランドも出店します。ブランドによっては過去シーズンの商品を販売したり、アウトレットという販路そのものを事業戦略に組み込んだりしています。
つまり、アウトレットを利用する企業と利用しない企業では販売戦略が違うのであって、その一点だけから「一流」「二流」を機械的に分類することはできません。
同じアウトレットでも商品の成り立ちはブランドによって違う
アウトレット商品についても一括りにはできません。通常店舗で販売されていた商品の在庫をアウトレットへ移すケースもあれば、アウトレット向けの商品ラインを展開するケースもあります。
例えば、シーズンが終了したカラーやサイズだけがアウトレットへ移動するブランドなら、商品そのものは通常店舗で販売されていたものと同じです。一方で、アウトレット専用の商品を企画して価格帯を調整するビジネスモデルもあります。
したがってアウトレットで買い物をするときは、「アウトレットだから品質が悪い」「定価店の商品と完全に同じ」と決めつけず、そのブランドの商品構成や品番などを個別に確認することが大切です。
ハイブランドの「格」は何で決まるのか
ラグジュアリーブランドを評価するときは、一つの条件ではなく複数の要素を見る必要があります。代表的なのは、ブランドの歴史、製品の品質、職人技、デザインの独自性、ファッション史への影響、知的財産、世界的認知度、販売網、顧客体験、希少性、価格維持力などです。
さらに企業価値や売上規模と、ファッション業界における格式も必ずしも一致しません。売上が非常に大きいブランドが「最も格式が高い」と決まるわけでもなく、店舗数が少ないことが必ず優位になるわけでもありません。
エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルが強いのは、こうした複数の要素で非常に高い評価を長期間維持しているからです。アウトレット非出店だけを切り取ると、そのブランド力を形成している重要な部分を見落としてしまいます。
エルメスとルイ・ヴィトンとシャネルにも戦略の違いがある
3ブランドを「三大ハイブランド」と一括りにすると似た企業に思えますが、実際のブランド戦略にはかなり違いがあります。
エルメスは革製品をはじめとする職人技と希少性がブランドイメージの重要な部分です。ルイ・ヴィトンは旅行鞄から始まった歴史を持ちながら、世界規模の店舗網とファッション、レザーグッズなどを展開しています。シャネルはオートクチュールやプレタポルテからバッグ、香水、ジュエリー、時計まで、メゾンとして独自の世界観を構築しています。
「値下げをしない」「流通を厳格に管理する」といった共通して見える特徴があっても、それぞれが現在の地位を築いた歴史的経緯は異なります。
高級ブランドでも中古市場では価格が変動する
正規店で値引きをほとんどしないブランドであっても、中古市場では市場原理によって価格が上下します。新品価格と中古価格は別の市場だからです。
人気モデルでは中古品でも高値が付くことがありますが、すべての商品が購入価格を維持するわけではありません。モデル、素材、色、状態、付属品、流通量、需要などによって査定価格は大きく異なります。
そのため「アウトレットがない=買った商品すべての資産価値が高い」という意味でもありません。ブランドそのものの評価と個々の商品の中古相場は分けて考える必要があります。
「三大」という言葉を見るときに確認したいこと
「世界三大○○」という表現は分かりやすいため、メディアやWeb記事でよく使われます。しかし、誰がどの基準で選んだのかによって意味は大きく変わります。
例えば売上高による上位3ブランド、ブランド価値ランキングの上位3ブランド、歴史的影響力から選んだ3ブランドでは、当然ながら顔ぶれが変わる可能性があります。
そのため「世界三大ハイブランド」という言葉を見かけた場合は、公式な称号だと受け取るのではなく、その記事や投稿がどのような意味で「三大」と呼んでいるのかを確認すると情報を正確に理解できます。
まとめ:アウトレットの有無と「世界三大ハイブランド」は別の話
エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネルは、世界のラグジュアリー市場を代表する非常に影響力の大きなブランドです。そのため3ブランドを「世界三大ハイブランド」などと表現する例があります。
しかし、これは世界共通の機関によって認定された公式な称号ではありません。また、3ブランドが高く評価される理由を「アウトレットに出店していないから」とだけ説明することもできません。
最高級ブランドとしての評価は、長い歴史、象徴的な製品、デザイン、職人技、希少性、販売方法、価格政策、顧客体験、世界的な知名度など、さまざまな要素の積み重ねによって形成されています。
同様に、アウトレットへ出店しているブランドについても、その事実だけで品質やブランド価値が低いと判断することはできません。アウトレットへの出店はブランド戦略を読み解く一つの材料ではあっても、ブランドの「格」を決める単独の基準ではないと理解しておくと、SNS上のランキングやブランド論にも振り回されにくくなります。


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